皆さま、こんにちは。オペラ好きのゆけったと申します。オペラを体験されたことのない方にオペラの魅力を知ってもらうことを、生きがいの一つとしています。

以前のミモレ編集室では、オペラの魅力を様々な角度から知ってもらおうとシリーズでブログを書いて、たくさんのメンバーと実際にオペラ公演にも出掛けました。編集室が再出発してからはブログをお休みをしていたのですが、そろりそろりと再開しようかな、と思い至りました。

オペラってそんなに難しくありません

オペラというと高尚で小難しいものという印象があるかもいらっしゃるかもしれませんが、ちょっとかじってみれば意外とそんなこともなく、いわゆる普通のエンタメの魅力にあふれています。豪華な舞台に、極上の音楽。お話は長い年月を経ても残った普遍的な人間の営みを描いたものが多く、現代でも共感できるものです。

見方としては歌舞伎に似ています。使われている言葉を全部は理解できないので、お話の背景やあらすじは知っておいた方が楽しめます。とにかくビジュアル重視で、音楽にはあまり興味がない、という方だと微妙かもしれませんが、少しでもクラシックや音楽全般に興味がある、歌が好き、演劇が好き、舞台芸術が好き、という方には、食わず嫌いで済まさずに、エンタメの究極の形態であるオペラを一度体験してみていただきたいです。

せっかくなら世界で有数のレベルの公演を観ていただいて、オペラの世界感と興奮にどっぷりつかっていただきたいところですが、オペラはオーケストラあり、合唱あり、ソロ歌手あり、舞台装置が大がかりなものや衣装も豪華なものも多く、費用がかさむためにいかんせんチケットが高額です。特に日本にすべてを持ってくる、海外の歌劇場の引っ越し公演は、最近の円安の影響も如実に受けていて、オペラファンの私ですら目が飛び出る位の価格上昇が止まりません。

そうだ、映画館にオペラを観に行こう!

いきなりそこまでの大枚をはたかなくても、最近は海外のオペラ公演を、公演からほどなくして日本の映画館でも観ることができます。私は映画版であってもかなり選んで観ていますが、もうすぐおすすめの映画版オペラがいくつか上映されます。私の好みではありますが、紹介をさせてください。

オペラ版「ロメオとジュリエット」

「ロミオとジュリエット」いえば、きっと多くの方がお話を何となくご存知ですよね。原作は言わずと知れたシェークスピアによる戯曲です。

あらすじ
イタリアのヴェローナで対立する2つの家にそれぞれ生まれたロミオとジュリエットが、一目で禁断の恋に落ちる。二人は密かに結婚するが、両家の争いに巻き込まれてロミオは街を追放される。ジュリエットは仮死状態になる毒を飲んで、ロミオと駆け落ちをしようとするが、それがロミオにうまく伝わらない。ジュリエットが本当に死んだと思ったロミオは、ジュリエットの墓所で自分も毒を飲む。ジュリエットは目覚めてロミオとの再会を喜んだのも束の間、ロミオの命が失われつつあることを知ると、自分も短剣で自殺を図る。事の次第を知った両家は、争いをやめることを誓う。



わかりきった話ではあるのですが、オペラはそのロマンティックさ、悲しさを倍増させるのが得意なのです。オペラに向いた題材だと思います。

5月10日より、ニューヨークにあるメトロポリタン歌劇場の公演(公演日3月23日)が、ライブビューイングと称して全国の映画館で公開されます。「ロミオとジュリエット」を元にしたオペラはいくつか存在しますが、一番上演が多い、フランス人作曲家グノーの作品(1867年初演)です。イタリアが舞台のお話ですが、この作品の言語はフランス語なので、この場合、ややこしいですが「ロオとジュリエット」と呼ばれています。

ジュリエットは若手実力派アメリカ人ソプラノ、ネイディーン・シエラ

今回の売りは何と言っても主役の二人です。ジュリエット役のアメリカ人ソプラノ、ネイディーン・シエラ嬢は、メトロポリタン歌劇場の常連で私が今唯一好きな歌手で、ご紹介するのがいつも彼女の公演になってしまいます。ジュリエット役は、駆け出しのときの声楽コンクールでもずっと歌ってきた得意な役です。往年のオペラ歌手のイメージとは異なるかもしれませんが、最近の歌手はボディメイクにも意識が高く、シエラ嬢もその例に漏れずにワークアウトはかかさずにスタイルを保っています。歌も驚異のロングブレスが特徴的で、高いところも楽々、細かい音符の動きも軽々とこなします。

ジュリエット(ソプラノ:ネイディーン・シエラ)のアリア(独唱)「私は夢に生きたい」
まだ本当の恋を知らないジュリエットが、恋に恋する気持ちを夢見心地で歌う


ほんまもんのフランス人テノールの歌声でメロメロに

ロメオ役は、現在フランス人テノールで売り出し中のナンバーワンである、ベンジャマン・ベルナイムが、満を持してメトロポリタン歌劇場のライブビューイングに初登場します。二枚目タイプではないかもしれませんが、声がとにかくイケメン、キラキラです。ロマンティックなフランス語のオペラは、やっぱりフランス人歌手の滑らかなフランス語で聴くとうっとりです。私の推し歌手である、ヴィットリオ・グリゴーロ(イタリア人テノール)のロメオも情熱的でよかったのですが、ベルナイムはまた全く別の端正な魅力を持つテノールです。今から彼のロメオを聴くのが楽しみです。

ロメオ(テノール:ベンジャマン・ベルナイム)のアリア 「太陽よ昇れ」。窓辺にジュリエットの姿を見たいと、彼女への恋心を歌う


METライブビューイング「ロメオとジュリエット」
2024年5月10日(金)~5月16日(木)
※東劇のみ5/23(木)まで2週上映



私は銀座の東劇に、多分5/11(または5/18)に行こうかと考えています。映画と同じなので、それぞれの劇場のウェブサイトで上映時間を確認してください。時間は直前でないとわかりません。

METライブビューイングは本編のオペラだけでなく、歌手や演出家、舞台裏を支える方々へのインタビューも含まれていて、オペラになじみがない方にもわかりやすい構成になっています。一般3,700円、学生2,500円は決してお安くはないと思いますが、本来のオペラのチケット代を鑑みれば、特等席で観られるようなものなので、お得ではあるかな、と思います。

皆さんに映画館でお会いできるかなぁ、と楽しみしています。ご関心を持たれた方、迷っている方も、ぜひ一度オペラを体験してみてください。