エッセイスト・料理家の寿木(すずき)けいさんに会いに山梨へ行ってきました。

寿木けいさんは大学卒業後、出版社で雑誌の編集者として働きながら執筆活動を始められ、2022年に山梨県へ移住、2023年秋に築130年の古民家を改装した住居兼ゲストハウス「遠矢山房(とおやさんぼう)」をオープン。現在は執筆活動と並行して山房で宿泊や日帰りイベントの開催などの活動をされています。

今年の2月に「心をニュートラルにする読書」というブログで、何度も読み返している寿木さんの著書について投稿しました。


初めて遠矢山房に訪問した後のことです。当初SNSへの投稿はNGだったので訪問記録にはできなかったのですが、先月お会いした際にブログに書いてもOKと許可をいただきました✨外観やキッチンなど撮影NGな箇所もあるのですが、訪問の記念に!改めて書き残しておきたいと思います。

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遠矢山房は勝沼のやや北西、山梨市牧丘町にあります。周囲をぶどう畑に囲まれ、夏には宝石のような果実の輝きが眩しくなるほどだそう🍇✨

初めて訪問したのは今年の2月。体の芯が凍るような寒さで毎夜降る雪がぶどうの木や道端に薄っすら残る頃、一泊の宿泊でお世話になりました。

山梨市内の最寄り駅からタクシーに乗り、近くで降りてGoogleマップを見ながら歩きます。山房はご家族と住まう家でもあるので外観は公開されておらず、ぱっと見では探せません。それらしき建物に目星をつけて近づいていくと、重厚な木製の引き戸から深緑のドレスを着た女性が弾けるように飛び出してきました。
「はじめまして。ようこそ!」とご挨拶いただき、目の前で動くお姿を拝見して、お会いできた喜びより先に「実在していた...!!!」と感動したのを覚えています。SNSで発信される遠矢山房も寿木さんも桃源郷の幻かのようで、到着するまでどこか半信半疑だったのです。

中に入ればそこはもう日常とは別世界。ドレスの裾を翻しながら、きびきびと動く寿木さんは山房のオーナーたる堂々とした佇まい。パラレルワールドに入り込んでしまったかのような、頭と足元がフワフワした感覚で最初に何をお話したのか全く思い出せません。ゲストルームの和室でお茶をたてていただき、一服してからようやく落ち着いて会話が始まった記憶です。

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遠矢山房のリビング
D8062934-4A00-41F2-9645-7C05F4B108DC.jpeg 3.33 MB向かって左手の縁側を通って奥にゲストルームの和室があります。
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ゲストルームの石の床の間。掛軸は季節や暦に合わせて変わります。このときは「桃紅李白」桃の花は紅く、スモモは白い。花は咲く意味を持たずにただ咲く、というのが寿木さんの解釈だそう。
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ゲストルームの西向きに作られた窓。書き物や読書に最適です📚本は寿木さんの本棚からお借りしました。夕暮れには障子越しに入る光と影が調和してとても美しいそう。
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お茶をいただいた後は、愛犬ブンちゃんのお散歩にご一緒したり、寿木さんの本棚から数冊お借りして読書をしたり。程良い距離感で放ってくださる贅沢なひとときを過ごしました。

夕食は冬と春の食材が盛り込まれたお料理の数々。地元で採れた食材もたくさん🌱エッセイで拝見していたメニューもあり、食べる前から胸がいっぱい🥲
5ABB5257-88D7-442A-B64A-5CF16CF0A953.jpeg 599.15 KB夕食のメニューの一部を。
こごみ出汁の茶碗蒸し、春菊とハムの春巻き、小豆ご飯と里芋汁、巨峰の温白玉。

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私の夕食が終わり落ち着いた頃を見計らって、寿木さんの夕食にお付き合いさせてもらいました。

山梨に移住を決めたきっかけ、古民家を見つけたときのこと、設計・建築・竣工に至るまでの経緯、遠矢山房に込める未来への想い、様々なことを伺いました。私が寿木さんの山梨移住を知ったのは『泣いてちゃごはんに遅れるよ』のあとがきでしたが、この本を執筆していたときとは全く想定外の今があると仰られていたことが印象的でした。外側から活動を眺めていた身としては、著書の表紙に使われた丹羽阿樹子さんの絵画「遠矢」の如く放った矢がこの地にぴたりと降り立ったように感じていましたが、実際には軌道修正を繰り返しての現在である、と。ご家族構成も山梨移住当初から変わっています。

私は寿木さんが綴る日々の暮らしや生き方を多面的にフォーカスした静かで温かく、それでいて潔さを感じる文章が大好きです。
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自分がいれば大丈夫。そう思えることが、一番の自立でなくて何だろうか。
『いつものごはんは、きほんの10品あればいい』より


家事、育児、仕事、どこにも分類できないタスクーこれが案外一番多いー、常に何かに追われて気持ちが置いてきぼりにされるような焦燥感にかられるときは、いつもこの言葉を思い出しています。今の私にとって自立とは"自分の頭で考えて、手(体)を動かすこと"小さな自立の積み重ねが私の暮らしを作っていくのだと自分を励ましています。

寿木さんのエッセイには自分なりのやり方で人生を肯定している正直な姿が描かれているので、読み返す度に自然とニュートラルな心持ちになります。

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翌朝起きると、部屋の前には梅白湯が置かれていました。
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縁側でほっこり朝食。蒸篭で蒸した温野菜とソーセージ、卵、ホカホカのパン🥐
庭には昨晩降った雪が積もっています。
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朝食後、遠矢山房の設計をした坂野由美子さんが手がけたワイナリーに出掛けてコーヒーをいただきました。
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屋根の雨樋から溶けた雪水が粒になって流れ落ちる様はオブジェのよう。陽射しが雪に反射して、目を開けているのが辛いほどの眩しさでした。
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己を知って、努力と挑戦を惜しまない人の言葉ほど響くものはない。実際に会ってお話して、心底実感しました。「以前のほうがもっと必死にごはんを作っていた。今は一食くらい食べなくたって、いつでも泣いていいと思えるようになった」と話す姿からは、人生の変化や逆境を受容し、胆力に変える強さが滲み出ていて本当に美しかったです。

別れ際、「またお会いできそうですね!」の一言に完全に射抜かれてしまいました😂さすが、遠矢山房の主人は近距離でも見事な矢の名人でした✨


次回、11月におばんざいの会というイベントに参加したときのことを書こうと思います。