東京・御茶ノ水の老舗旅館「龍名館」と聞くと、どこか“知性の香り”を感じる人も多いかもしれません。創業は明治。文豪・幸田露伴とも縁が深く、露伴の次女であり随筆家・小説家の幸田文は、代表作『流れる』の中で龍名館を「帝国ホテルと並ぶ在京の名宿」と記しました。華美ではないのに、凛とした品格がある——そんな東京の粋を知る大人たちに愛されてきた場所です。

私の母方の祖父は俳句を嗜み、句会の場として龍名館を利用していたそう。静かな畳の香り、硯の墨の匂い、季節の言葉を交わす声。祖父の話を聞くたびに、龍名館には単なる“宿”を超えた文化の余白が流れているのだと感じていました。

IMG_0310.jpeg 547.15 KBその龍名館の系譜を受け継ぐ「ホテル龍名館東京」が、東京駅八重洲北口すぐそばにあります。都心のど真ん中にありながら、一歩足を踏み入れると空気がふっと和らぐ場所。そこで今、8月末まで提供されているのが、“発酵”をテーマにした「麹花(こうじばな)コース」です。

IMG_0305.jpeg 154.23 KB季節の変わり目は、なんとなく身体が重かったり、肌がゆらいだり、気持ちまで不安定になりがち。そんな時こそ意識したいのが「腸活」です。最近では“第二の脳”とも呼ばれる腸ですが、日本には昔から、麹や味噌、酒粕、酢など、身体を内側から整える知恵が食文化として根づいていました。

IMG_0316.jpeg 364.74 KB今回のコースでは、その発酵文化を現代的に、しかも繊細な和食として楽しませてくれます。

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まず心を奪われるのが、「発酵前菜七種盛り合わせ」。少しずつ、美しく並ぶ小鉢たちは、まるで和のアフタヌーンティーのよう。塩麹や味噌、発酵レモンなどを使い、素材の旨みを静かに引き出しています。派手ではないのに、ひと口ごとに身体がじんわり喜ぶ感覚があるのです。

IMG_0312.jpeg 213.8 KBメインは、熟成魚のしゃぶしゃぶ。昆布や麹の力で旨みを深めた魚を、さっと出汁にくぐらせると、ふわりと広がる香りに思わず目を閉じたくなるほど。脂の強さではなく、“滋味”で満たされる感覚は、大人の女性にこそ響く贅沢かもしれません。

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さらに、発酵甘酒を使った一品や、酒粕のコクを忍ばせた料理など、コース全体に“整える美味しさ”が散りばめられています。食べ終えた後、不思議と胃が軽やかで、身体の内側に静かにエネルギーが灯るような感覚になるのも印象的でした。

IMG_0315.jpeg 265.72 KB忙しい毎日の中で、私たちはつい「刺激」や「効率」を求めがち。でも本当に身体が求めているのは、こういう穏やかな滋養なのかもしれません。

文豪や俳人たちが愛した龍名館の美意識は、時代を超え、今は“発酵”という形で受け継がれている——。東京駅のすぐそばで味わう、静かな腸活の時間。自分を整える小さな旅としてもオススメです。

麹花コース|ホテル龍名館東京【公式】